日本はなぜデジタル後進国と呼ばれるのか?ITエンジニアが知るべき現状と未来

こんにちは。Itoopの原です。

今回は、「日本はデジタル後進国である」というテーマについて考察していきます。

以前から、日本は他の先進国と比較してITリテラシーが低いことが指摘されてきましたが、2024年に発表された国際経営開発研究所(IMD)によるデジタル競争力ランキングでは、日本は67カ国中31位という結果でした。
この順位は、果たして何を意味しているのでしょうか。
また、これからの日本社会やITエンジニアのキャリア形成にどのような影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。

今回のコラムでは、このランキングを手がかりに、日本のデジタル競争力の現状と今後の課題について掘り下げていきます。

参考:https://www.imd.org/centers/wcc/world-competitiveness-center/rankings/world-digital-competitiveness-ranking/

「デジタル後進国」とは何か?

「デジタル後進国」とは、先進諸国と比較してデジタル化の推進が遅れている国を指す言葉です。
もう少し具体的に言えば、インターネットやコンピューター、AIなどの先端技術を十分に活用できていない国という意味になります。

たとえば、ここ数年で急速に進化を遂げているAI技術。
みなさんは、どの程度AIを日常生活や業務の中に取り入れているでしょうか?

私の身の回りを見ても、「AIが進化している」という認識はあっても、実際に日常業務に活用している人はそれほど多くありません。
さらに、地方在住の友人などと話すと、「AIって便利なんでしょ?」というレベルで、具体的に使った経験がない人がほとんどです。

このような現状を見ると、国際的なデジタル競争力ランキングで日本が中位にとどまっているという結果にも納得がいきます。

なぜ日本は「デジタル後進国」と評価されたのか?

日本がデジタル後進国と評価された背景には、いくつかの要因があります。
その中でも特に注目すべきは、

「ビジネスの俊敏性」
「上級管理職の国際経験」
「デジタル/技術的スキル」

の3項目において、いずれもランキングで最下位レベルだったことです。

まず、「ビジネスの俊敏性」とは、市場環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、競争力を維持・強化していく力を指します。
これは単なるスピード感のある意思決定だけではなく、組織の在り方そのものが柔軟であるかどうかも重要です。

しかし、日本企業の多くは依然として階層的で縦割りの組織構造を維持しており、意思決定には多くのステップが必要です。
例えば、1つの新規プロジェクトや変革を進めるにも、複数部門での合意や上層部の承認を経なければならず、結果として変化への対応が遅れる要因となっています。

このような構造的な遅れが、ランキングでの低評価につながっていると考えられます。

デジタル先進国との違いと、日本が抱える将来的なリスク

では、デジタル先進国とされる国々と比べて、日本はどのような点で遅れを取っているのでしょうか。
また、このまま現状のペースで進んだ場合、日本はどのような影響を受ける可能性があるのでしょうか。

まず1つ目の指標は、インターネットの普及率です。

日本におけるインターネットの普及率は、2023年時点で86.2%と報告されています。
一見すると高いように感じるかもしれませんが、たとえば韓国では同時点で98%と、ほぼ全国民に近い水準でインターネットが利用されており、その差は決して小さくありません。

さらに、SNSの普及率にも注目すると、日本は2023年時点で**わずか39%**にとどまっており、これは先進国の中でも最下位クラスの数値です。
日常的にSNSを利用している方も多いと思われる中で、この数値は意外に感じられるかもしれません。

こうした状況が意味するのは、情報の受発信のスピードと質における国際的な格差です。

インターネットやSNSの活用が進んでいる国々では、情報の流通やデジタル経済の拡大、AI・データ活用の一般化が加速しており、それに伴って競争力の向上や経済成長にもつながっています。

一方で、日本がこのままの状態を続ければ、情報発信力の低下やグローバル市場での存在感の減少といったリスクに直面する可能性も否定できません。

参考:https://ebisumart-lite.com/blog/ec_korea/

デジタル化を推進するために必要な3つの分野の取り組み

日本がデジタル後進国という評価から脱却し、国際的な競争力を高めていくためには、行政・企業・教育の3つの分野での取り組みが不可欠です。

まず、行政においては、役所での各種手続きのオンライン化・自動化を進めることで、市民の利便性向上や業務効率の大幅な改善が期待されます。

紙ベースの手続きが中心となっている現状から、迅速かつ簡潔なデジタル対応への移行が求められます。

次に、企業では、AIやITツールの導入によって業務の効率化・自動化を推進することが重要です。

これにより生産性を高めるだけでなく、変化の激しいグローバル市場において、日本企業が競争力を維持・強化できる環境が整います。

最後に、教育の分野では、初等・中等教育の段階からプログラミングやITリテラシーの基礎を学ぶ機会を拡充することが求められています。

次世代の人材がデジタル技術を自然に活用できるようになることで、将来的なデジタル人材の裾野を広げ、社会全体の底上げにつながります。

さいごに

日本は、繊細な感性や“おもてなし”の文化に代表されるように、他国にはない独自の魅力を数多く持つ国です。

治安の良さや生活の安全性、そして長い歴史の中で育まれた伝統文化は、世界からも高く評価されています。

しかしながら、今回ご紹介したデジタル競争力ランキングが示す通り、日本はデジタル分野において世界の流れから取り残されつつあるのが現実です。

このままの状態が続けば、将来的な国際競争力の低下や経済成長の鈍化といったリスクも避けられません。

まずはこの課題を直視し、一人ひとりが「デジタルに対する意識」を持つことが、未来への第一歩になります。

近年では、教育現場においてもデジタル環境の整備が進み始めており、1人1台の端末による学習や、ICT設備の導入が一部の学校で実現されています。

まだその取り組みは一部にとどまっていますが、こうした動きが全国に広がっていくことが、日本全体のデジタル力を底上げする大きな鍵となるでしょう。

そしてもし、今「自分ももっとデジタルの波に乗りたい」「生成AIについて学んでみたい」と感じている方がいらっしゃれば、5月に開催されるItoop主催のイベント『生成AI LT会』へのご参加をおすすめします。

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みなさんと現地でお会いできることを、楽しみにしております。

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【株式会社ゆいまーる(代表取締役社長 島袋尚美)】
『若者のエンパワーメントを通じて、日本を元気に』を理念に、Itoop(アイティープ:ITエンジニアキャリア支援/ITコンサルティング)、JUNGLEBREWERY(ジャングルブルワリー:クラフトビール事業)、Carellia(キャリリア:キャリア支援)など複数の事業に取り組んでいます。
▶HP:http://yuima-ru-tokyo.com/
▶広報部note:https://note.com/yuimaru_tokyo

【島袋尚美の経歴】
沖縄県出身。筑波大学卒業後、ITエンジニアとして証券会社に入社。
入社2年目で日本IBMに転職し、同時にダブルワークで立ち上げの準備を開始する。
28歳で独立し、2016年に株式会社ゆいまーるを設立。
現在は国際結婚を機に子育てをしながら、ママ社長として複数の事業を精力的に展開中。
その活動は広く注目され、「VOGUE」や「沖縄タイムス」をはじめとする多数のメディアで掲載される。